AIで楽曲を楽器やボーカルに分離する

「それでいいのか?

新しい服を着た私を見て、ネスティが問いかけてくる。
私はそれに頷いて、にっこりと笑う。
新しい服を着る瞬間のドキドキは、大好きだ。

「ありがとうございますね、ネスティさん!」

「…必要経費だからな」

少し照れたように可愛くない事を口にするネスティ。
セリフが可愛くない事は可愛くないのだけど。

そのほんのり赤く染まった耳や頬が可愛いとか思ってしまった。

まあ、そんな事言えば彼は怒るに決まっているから。
だから、口に出す事はしないけれど。

…というか。

なんとなくネスティの扱い方が分かってきたかもしれない。
何故なら彼はとても素直な反応をするのだ。
素直に礼を言えば、彼は照れる。
そして、照れたのを隠す為に、口が悪くなる。
こっちが喧嘩を売れば、彼はきっちり買っていく。
だから、とげとげしい口調になる。

ネスティが可愛いと思うと同時に、ちょっとくすぐったい。

まだ一日も彼の側に居ないのに、なんだかずっと側に居たみたい。
彼の側にいるのは、心地良くて、楽しい。

「…いいから、行くぞ」

にこにことネスティを見ていたら、彼はそう言ってさっさと店を出て言ってしまった。
荷物――私が着ていたネスティのお下がり――を持ったまま。
なんだかんだ言って優しいのも彼の魅力かもしれない。

そう、思う。

私は、そんなネスティの後を慌てて追いかけた。

「待ってください〜」

ありがとうございました…と、お店の人の声がして、扉に付いたベルがカランカランと鳴る。
先を歩くネスティの頭の上には気持ちの良いくらいに晴れ渡った、青い空が見えた。


△▼


買い物の後、私とネスティは青の派閥に来ていた。

「トリスさん達が心配なんですか?」

と、私が聞くと、

「そんな事、あるわけがないだろう」

と、即座に返してきた。
なんていうか、想像通りの返答に、私は苦笑いを隠せない。
その事にムッとしたらしい、ネスティ。

「何を笑ってるんだ」

「何ででしょうね〜」

私が茶化して答えると、ネスティの額に青筋が浮く。
本当に、なんてわかりやすい性格なのだろうか。

そんなネスティがおかしくておかしくて。
私が思わず声を上げて笑ってしまい、そんな私を怒鳴る為にネスティが大きく息を吸い込んだ時。

「なんでネスがこんなとこに?」

…と、マグナが声をかけてきた。

そののほほんとした声音に、喧嘩に突入しようとしていた私とネスティの動きが止まる………というか、気が抜けた。
私とネスティが顔を見合わせてから、そちらへ向き直る。
そして、ネスティが口を開いた。

「僕がどこにいようと君には関係あるまい」

いつも通りに、そっけない口調。
その言葉にマグナが明らかに沈んだような表情になる。
なんていうか、飼い主に叱られた子犬のように………可愛い。

「もしかして、心配してくれたんだ?」

落ち込むマグナの後ろから、明るくとリスが声をかけてきた。
よく見れば、その更に後ろにまたもや見知った顔がふたつ。
私の記憶が確かならば、トリスの後ろでおどおどしている緑の髪の彼がレシィくん、マグナの後ろに隠れるようにしてこちらを眺めている黒髪の女の子がハサハちゃんのはずである。

説明書のイラストを見た時よりも、実物の方が数倍可愛いかもしれない。

そんな事を私が考えている間に、ネスティとトリス&マグナの会話が進んでいた。
ネスティがお説教体制に入っていて、トリスとマグナは拗ねた感じの表情である。
だが、そこに和やかに入ってくる影があった。

「はっはっは…、相変わらずお前はマグナとトリスに厳しいのう」

「「ラウル師範」」

素敵なオジサマの名前はラウル・バスク。
“バスク”という家名が示す通りに、ネスティさんのお父さんである。
ただし、義理の…だが。

ラウル師範がマグナとトリスを褒めると、ふたりは嬉しそうに礼を言う。
どこかの誰かさんと違い、素直な反応を示す二人が微笑ましい。

「いいのですか、師範。
 本当にこんな不真面目なヤツらを一人前と認めてしまって?」

「あのなぁ…」「ネスぅ…」

ネスティの言葉に、さすがの二人も文句があるようだ。

…というか、ネスティにそこまで言われる程、不真面目なのか?
トリスとマグナは。

私はそんな子達が主人公だったのか…とか、しみじみ思って彼らを見た。
マグナもトリスも、私と目が合うと、にっこりと人好きのする笑顔をくれた。
素直に嬉しいが、その後ろで少しずつ不機嫌になっていくレシィくんとハサハちゃんが気になっていたり。
マグナもトリスも、その事には気付いていない。

とりあえず、レシィくんとハサハちゃんの御機嫌の為に、ネスティに区切りをつけてもらおうと、彼を見上げる。
ネスティは驚いたような残念に思っているようなホッとしている様な。
そんな、複雑な表情でラウルさんに頷いていた。

聞いていなかったからわからないのは当たり前なのだけど、ネスティとラウルさんは何を話していたんだろうか。
ちょっと気になる。

「さて、と」

ネスティとの会話にひと段落つけると、ラウルさんは改めて、マグナとトリスの方へ向いた。
マグナとトリスは何だろう?…という顔で、ラウルさんを見上げる。

「二人とも、早く部屋に戻りなさい。
 呼び出しが来ているといかんからな」

「あ、はい」「はい、師範」

ラウルさんの言葉に二人がそれぞれに頷く。
さすがラウルさんは心得ているなぁ…と、感心した。
ネスティにラウルさんを見習えばいいのに…と言おうと思って見上げると。

深刻な顔で、彼は何かを考えているようだった。
そして私の視線に気付くと、何を見てるんだ…といつもの様に言い、私の頭を軽く叩いた。
心配しなくても大丈夫だというようなその仕草に。

何故だか私は不安を覚えていた。








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