ネスティの説明はわかりやすく簡潔であった。

理解した事を順番に箇条書きにしてみるとこんな感じ。


 ・ネスティは部屋の扉も窓も鍵をかけて就寝
 ・なのに朝起きたら私――が隣で寝てた

 ・ネスティは機属性召喚師
 ・召喚師とは、サモナイト石で人や物を召喚する人
 ・ネスティのサモナイト石がひとつ砕けていた
 ・それは無属性という、世界の定まらない石

 ・ネスティの身に覚えは無いが、召喚術の暴発
 ・結果、名も無き世界から私――が召喚された
 ・名も無き世界とはどうやら地球の事らしい

 ・ネスティの召喚事故で呼ばれた
 ・だから、私――はネスティの召喚獣

 ・事故な上に名も無き世界出身の私は帰れるかわからない
 ・ネスティが死ねば、確実に帰れない(らしい)
 ・一般的に、召喚獣は召喚した人間の僕である



「………って事は、ネスティさんが私のご主人様って事でしょか?」

理解した内容に、嫌な単語がいくつかあったので、それを否定してもらおうと、ネスティに言う。
だけど、ネスティはあっさりと真顔で頷いた。

「そういう事になるな」

「!!!」

衝撃。

99%帰れないような事を言われた上に、ネスティ・バスクという召喚師の下僕。
元の世界に帰れる云々はどうでもいい。
私にはゲームと本以外に未練はないのだから。

けれど、下僕というのはいただけない。
だって、ネスティをご主人様と呼んで敬って、ご主人様(ネスティ)の身の回りの面倒を見て、命を賭けてでもご主人様(ネスティ)を守るだなんて………

なんていうか………屈辱。

なんで、こんな人間の下へと降らなければいけないのだろうか。
確かに、素直で純情な性格には好感を持てる。
容姿も……良いとは思う。
この言動からして、おそらく頭も良いだろう。
先程の説明の仕方からしても、教え上手なのがよくわかる。
教師に向いているな………と、話がずれた。元に戻そう。

なんだかんだとネスティを褒めまくっている私だが、嫌なのだ。
なんていうか、こう、ネスティの下には意地でも降りたくないような……。
てか、ネスティの下僕だなんて屈辱以外の何者でもないと思う。

ああ、人権だの何だのと騒いでいる世界が懐かしい…。

そんなことをあれやこれやと考えていると、ネスティが困り顔で話しかけてきた。

「…そんな顔をしないでくれ、

少し弱ったような声音。
その表情は、どこか泣きだしそうな、哀しそうな顔で。
おや?……と、私は首を傾げた。

「いつになるかわからないが、ちゃんと元の世界に戻すと約束するから…」

その声に表情に。
私は素直に頷いていた。
その私を見て、ネスティは少しだけ微笑んだ。

その優しさと哀しみの混ざった笑みに、確信してしまう。



彼は、痛みを知る人間だ。








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