ピチピチチュンチュンと、小鳥の鳴く声。
窓から差し込む光が眩しい。
私はふかふかな布団の中で目が覚めた。

ふかふか………あれ?

「………布団?」

ぼんやりとした意識でも、疑問は出てくる。
確か、昨日はゲームをしてる最中で眠ってしまったはず。

「???」

眼鏡を外し、むにむにと目を擦りながら起きる。
…と、目の前にはどこかで見たような人物がひとり。
驚いたような、警戒してるような、そんな表情でこちらを見ている。

「……………」

「……………」

どこで見たんだっけか…と、記憶を探る。

やや青色を帯びた黒い髪と、同じような色の瞳。
肌は透き通るように白いが、所々に刺青のような灰色のモノが見え隠れしている。
年は……20前後くらいの、青年。

「………君は誰だ?」

私が記憶を探っていると、青年が先に声をかけてきた。
なんていうか、“甘い”と形容できるような声。
この声も、どこかで聞いたような覚えが………

「……もう一度聞く。君は誰だ?」

問いに答えない私に少しイラついたように、問いかけてきた。
その様子に、なんとなく反感を抱いてしまった。
ついでに言えば、それは私が問いたい。

「……君こそ誰? ついでにここどこ?」

青年から目を逸らし、キョロキョロと周囲を見る。
広さは8畳くらい、天井まで届く本棚が壁一面にあり難しそうな本で埋まっている。
窓の方を見ると、その外には青い空と青々と茂った木々が見えた。
ちなみに今乗っているベッドもやたらとデカイし、すっごくふかふか。
少なくても、私の部屋ではないし、ウチの家のどの部屋でもない。
ついでに言えば、知り合いにこういう部屋を持っている人物もいない。

見覚えの無い部屋のベッドの上で、どこかで見たような気がする青年と一緒。
私はこれでも性別は女なのだし、問題だろう。

私がじーっと不審げに見上げると、青年はこめかみに手をやり、どこかイラついた様子で答えた。

「………僕はネスティ・バスク」

「ふーん、ネスティ・バスクって言うんだ………あれ?」

「?」

……ネスティ・バスクと言ったかこの男。

信じられなくて、自分のこめかみをモミモミ。
バスクは分からないが、記憶の中で“ネスティ”なる人物に一致するものは、ただひとつ。

「……兄弟子さん?」

「君の兄弟子になった覚えは無いが?」

ボソッと呟いた言葉に律儀に返してくる。
なるほど、説明書にあった几帳面さがこの辺か。

……て、何をすんなり受け入れてるんだ、私は。

普通、ゲームのキャラが現実にいるわけないのに。
少しは焦って驚こうよ……とか、ボヘッと思ってみる。
でも、焦っても仕方ないので、焦らない。
うーん、意味の無い思考をしてしまった……。

「……僕は名乗ったぞ?」

今度はそちらの番じゃないのか?…と、ネスティ。

「私は

…と、そこまで言ってからふと考えてみる。
確か、兄弟子さんの名前はネスティ。
んで、その後でつけたのはもしかして姓では無いのだろうか?
と、いう事は、“名・姓”と名乗るべきか。



「……! 家名持ちか!?」

「…かめいもち? 何それ」

真面目にわからないので、聞き返す。
すると、ネスティは聞き返されたことに驚いたようだった。
そして、そのまま思考の迷宮へと突入。

その真面目さというか固さというか。
それに感心しながらも、とりあえずもう一度聞いてみた。

「…ここはどこでしょか、ネスティさん?」








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