自分の中にある、強い強い意志。
自分の中にある、強い強い意志。
2つの意志がぶつかって、その度に自分が消えていく。

仕方ない。
仕方ない?
そんなもので終わらせたくない大事なもの。
大事な――大切なもの。
でも、じわじわと蝕まれていく。


   *  *  *


ある夜の一人っきりの時間。
声を聞いた。
誰か来たのかな?
そう思ってドアを開けた。

誰もいない。
誰もいない、シンと静まり返った廊下。
ため息ひとつ。
部屋へ戻ろうと思った。

リン・・・

音がした。
そして、声がした。
振り返っても誰もいない。
でも声はした。

何故か・・・
何故か急に、月が見たくなった。
屋根裏部屋へ続く階段を上る。

とんとんとんとん

古い床板に自分の足音が乗り、静かな廊下に冷たく響く。

とんとんとんとん

屋根裏部屋から外へ――屋根の上へと上る。

故郷の空とは違う異世界の空。
故郷ではありえない大きさの月が

“こんばんは、ご機嫌いかが?”

そう訊ねてくる。

沢山の星々が

“今宵は満月、楽しみましょう”

そう誘ってくる。

何故だろう。
とても懐かしく、あたたかい。
涙がこぼれた。

これは・・・この意志は誰のもの?

そして気付いた。
これは自分の中に感じていた2つの意志とは、まったく別のものであるということに。
この意志が自分の中にいたからこそ、自分が消えずにすんだということに。

自分は・・・自分は・・・・・・


   *  *  *


どんな結末が待っているのか、自分は知らない。
だけど、後悔したくない。
だから、自分の望んでいることを精一杯やろう。
どんな結末になろうとも、自分は自分であろう。
そう決めた。

それでいい――

また声がした。
今度ははっきりと。


   *  *  *


見上げると月が優しく、星々は明るく微笑んでいる。
この星々のなかに、故郷はあるのかもしれない

ふと、そう思った。