さん、こっちのサラダもいかがかね?」

朝食の席で、私にそう聞いてくる白髪のおじさまはラウルさん。
ネスティによると、彼の師であり養父でもある方だそうだ。
優しい笑みがとても魅力的なおじさまである。

「はい、いただきます」

ラウルさんの問いかけに喜んでと、私が頷く。
ラウルさんは嬉しそうにサラダをよそってくれる。

ああ、幸せ。

そんな幸せ気分いっぱいの私に、ネスティが即座に口を挟んできた。

「……少しは遠慮というものをしたらどうだ?」

ごもっとも…、とか思わなくも無いが、彼に言われるとムッとする。
けれど、ラウルさん――素敵なおじさまの居る前で怒鳴りたくは無い。
だから、ネスティに向かってにっこりと微笑んだ。

「遠慮してもお腹は空くもんですよ?」

「それでも普通はするものだろう?」

ネスティもムッとした表情で言い返してきた。

私もそうだが、彼も結構、負けず嫌いなようだ。
なんとなく険悪な空気が流れ始める。

その気配に気付いたのか、私とネスティが言い争うべく口を開きかけた時。
ラウルさんが楽しそうに、口を挟んできた。

「いいんじゃよ、ネスティ」

おいしそうに食べてくれるのが嬉しいのだと、ラウルさん。
どこまでも穏やかに話すラウルさんに、私もネスティも毒気を抜かれてしまう。
その年齢に関係の無い爽やかさに、うっとりと見惚れる私。

なんでこんな素敵なおじさまの許で育ったネスティはこんなにも可愛くないのだろうか。

「……養父さんがそう言うのなら、僕は止めませんが」

不服そうな表情でネスティが言う。
それでもラウルさんが嬉しそうに頷き、私に向かって、好きなだけ食べなさい…と言ってくれた。
その仕草にさえ、私は見惚れてしまう。

本当に。
本当に、なんて素敵で良いおじさまなんだろうか!

喜んで!……と、ラウルさんに向けて笑った。
横に座っているネスティがそんな私を睨んでいたけれど、ムシムシ。

そんなの気にしたら、せっかく美味しいご飯が台無しになってしまうからね。








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